電話する

講義内容

最近の新聞より抜粋

日本の先進医療を求めて来日する外国人が増えている。中でもプライバシーを守りたい裕福な中国人が日本の病院の高い信頼性と親切・丁寧な対応に注目し、日本で治療・診療を受ける医療渡航者の大多数を占める。医療ツーリズム体制の充実に取り組む政府の後押しもあって、外国人患者の受け入れに積極的な病院も増加。新たな収益源になりうるとの読みからで、両者を仲介する旅行会社も力を入れる。

 「受診した日本の病院で初めて検査内容などの説明を聞いた中国人は多く、感動して泣き出す患者もいる。だから満足度は高い」

 中国の有名病院では順番待ちの長い列ができるため診療時間は数分で終わり、説明もない。にもかかわらず医療費は高いため、「中国の病院には行きたくない」という富裕層は少なくない。中国人に病院への不満を聞いたところ、1位は「医療費が高い」で、「待ち時間が長い」「医師・看護師・検査技師の信頼性が低い」が続いた。

 
満足ならリピーター

 「中国でも高いブランド力をもつ」という聖路加国際病院。日本政府が外国人患者の受け入れ推進を打ち出し、医療渡航者の長期滞在などを認める医療滞在ビザを創設した2011年1月、同病院の福井次矢院長は「今年を期して本格的に国際化にかじを切る」と宣言。外国人患者と英語などで意思疎通できる職員を増やしたり、世界で最も厳しいといわれる米国の医療施設評価認証機構の「JCI認証」を取得したりと、矢継ぎ早に手を打った。
 12年秋には東京・大手町に、外国人ビジネスマンをメインターゲットにした聖路加メディローカスを開設した。人間ドックに力を発揮するPET(陽電子放出型撮影法)-CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(核磁気共鳴画像装置)など最新の検査機器を備え、医療の質とあわせて外国人患者を増やしている。

 同病院人事課のマネジャーは「高品質とそれに見合った価格をポリシーに、患者に不義理がないように徹底的に対応する。中国人などは満足するとリピーターになるし、親族や友人を連れてくる」と話す。福井院長は「メディローカスの外国人比率は10%前後だが、20年には20%を目指す」と手応えを感じている。

 外国人患者の受け入れに熱心な湘南鎌倉総合病院は、12年に国際医療支援室を開設すると同時に認証プロジェクトを推進。同年に外国人にアピールできる「JCI認証」を、13年には日本版JCIと呼ばれる「JMIP認証」を取得。さらにムスリム(イスラム教徒)にとって食の安全・安心を確保する「ハラル認証」も差別化戦略の一環として取得した。
 「医療渡航者のほとんどが中国人」という同病院だが、支援室の海老沢健太主任は「訪日客の治療に積極的に応じる。安心してきてほしい」とアピール。そのために英語、フランス語、中国語など外国語が話せるスタッフをそろえる。そのかいあって患者数、売り上げとも増加、売り上げは全体の10%を占めるまでになった。「将来は20%程度まで引き上げる」と意欲的だ。

 ◆保険外収入が頼り
 日本で医療サービスを受けた外国人は高い技術力と親切・丁寧な対応に満足して帰る。このため医療ツーリズムは拡大の一途だが、言葉の壁や文化の違いのほか、「倒れたら助けるのが医療であって産業ではない」という意識が医療現場には依然として残っており「医療ツーリズムに積極的ではない」「旅行の一環で治療はやめてほしい」との声も聞く。
 しかし「世界の医療サービスを知り、日本人より厳しい目でみる中国人」の口コミもあって、世界で高い評価を得ているのは確かだ。正確なデータはないが「訪日客の伸びと連動している」といわれるほどで、人口減少時代に突入した日本の病院にとって医療ツーリズムは新たな経営の柱になりうる。

 ある病院関係者は「医療費抑制傾向が続く中、頼りになるのは保険外収入。また最新鋭の医療機器を買い続けるためにもインバウンドを受け入れる態勢を強化していく」と打ち明ける。病院にとってもはや医療ツーリズムは欠かせない。